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口腔ケアについて
歯科治療には歯科医師による治療以外にも大切な分野があります。
それは口腔ケアと呼ばれ、歯科衛生士がその役割を担います。
口の中を清潔にするだけではなく、口の機能を維持・改善し、全身的な感染症を防ぐためにも必要なのが口腔ケアです。
口腔ケアによって食べ物を噛んだり、飲み込んだりすることができるようになると、体力や体の抵抗力がつき、全身の健康状態が良くなるのでQOL(クオリティオブライフ:生活の質)が向上します。
さらに家族や親しい仲間との会話をしながらお食事をすると、脳への血流が増え脳の働きを活発にします。
何かにチャレンジしようという意欲も出てくるので、閉じこもりや認知症の予防にもなります。
高齢者の方々が特にかかりやすい誤嚥性肺炎は、口腔内の細菌が唾液や食べ物と一緒に誤って気管などに入ることで起こる肺炎です。口腔ケアで口腔内をきれいにし誤嚥を防ぐことは、もっとも身近で効果的な予防になり、歯科衛生士の役割のひとつになります。
ケア終了後に『きれいになりましたよ』と患者さんに声をかけると、『またきてね』とうれしそうに言っていただけることが歯科衛生士の何よりの励みであり、喜びです。
口腔ケアとは
口腔ケアの主な効果
- 口の中を清潔に保って細菌の増殖を防ぐ
- 体力や体の抵抗力をつける
- 唇やの頬、舌の動きをよくする
- 会話などのコミニュケーションを良くする
- 唾液の分泌を促し、口の中の乾燥を防ぐ
- 誤嚥性肺炎など、全身的な感染症を防ぐ
- 味覚を保ち、食欲を増進させる
- 閉じこもりや認知症を防ぐ
口腔ケアの基本
器質的口腔ケア
口の中や入れ歯をきれいにして、細菌の増殖を防ぎ、虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎、感染症などを防ぐことが目的です。歯ぐきや歯、舌、頬などの粘膜、入れ歯などについた歯垢(バイオフィルム)をこすり落とすため、歯磨き、うがい、入れ歯の清掃、舌や口の粘膜の清掃などを行います。
機能的口腔ケア
噛む・飲み込む・話す・呼吸するといった口の機能低下を防ぎ、増進させることが目的です。
かむ力や飲み込む力を強く維持する体操、唾液腺のマッサージ、頬や舌、筋肉のマッサージなどを行います。
摂食・嚥下障害とは
食物を口に運び、噛み砕いて飲み込むまでの一連の過程を摂食・嚥下といい、唇や舌、喉や食道の筋肉等さまざまな機能がかかわって、とても複雑な動きをしています。
これらの機能が低下してしまう状態が摂食・嚥下障害です。
脳卒中や認知症、パーキンソン病などの病気や老化によって摂食・嚥下障害がおこると、食べられなくなるために栄養状態が低下したり水分や塩分が不足して脱水症状を引き起こしたりします。
誤って食べ物が気道に入ったり、窒息する危険が高まる他、汚れただ液や食べ物が肺に誤嚥すると誤嚥性肺炎を引き起こします。
さらに食べるという楽しみが失われると共に、生きる気力も次第に低下してしまいます。
こんな症状に要注意!
摂食・嚥下障害を疑いましょう
- 食事中や食後にむせたりせき込んだりする
- お茶やみそ汁などの水分でむせる
- 口から食べ物がこぼれる
- 食べ物がのどに詰まる
- 食べ物が胸に詰まる
- 食後に声がかれる
- 食欲がなく、体重が減る
嚥下内視鏡検査(VE)
高齢者に多く見られる、口腔機能低下、認知機能低下、疾病などが原因でおこりやすい嚥下障害を防ぐには、内視鏡検査が効果的です。
鼻から3~4mmの内視鏡を挿入し、鼻の奥や喉の動き、粘膜の状態、誤嚥や食物の残留有無などを調べます。ご家族・施設スタッフの方々に、検査結果を踏まえた調理方法をご検討いただくことで、個人個人の飲み込む能力に適した食事が可能になります。
ポータブルの検査機器を食事の場に持ち込むので、普段の食事の姿勢のまま検査することができます。
ご家族・施設スタッフの方に嚥下の状態を確認していただけることは、治療や嚥下予防の効果アップにつながります。
お口健康ケア ミニコラム
口の中は細菌が増えやすい場所
口の中にはたくさんの細菌がいます。歯と歯の隙間や上顎、舌の表面などいろんなところにいます。
口の中は汚れが残りやすいので清掃が不十分だと細菌の住処を作ってしまうことになります。
また、食べ物を飲み込むためには歯で噛み砕くだけではなく、唇や頬、舌の動きなどの機能が大きくかかわってきます。
口の中の機能が低下すると、唾液腺への刺激が減って唾液の分泌量が減り、さらに口の中の機能が低下するという悪循環が起こり、口の中が汚れやすくなります。
口の中で増えた細菌がトラブルを引き起こす
口の中が汚れ、唾液の分泌量が減ると、悪玉の細菌が口の中で爆発的に増加します。
それが免疫力の低下している高齢者の方々などに細菌を感染しやすくしてしまうことになります。
現在日本人の死因の第4位は肺炎で、そのうちの90%は65歳以上の高齢者です。
中でも多いのが誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎とは細菌に汚染された食べ物や唾液が誤って、気管から肺に入ることで起こってしまいます。
(誤嚥)高齢者の場合、嚥下反射やセキ反射が起こりにくいので誤嚥しやすく、繰り返し誤嚥するうちに肺炎を発症してしまいます。
カゼやインフルエンザにかかりやすくなる
悪玉の細菌が出す酵素によって口やのどの粘膜がダメージを受けると、風邪やインフルエンザのウィルスが
体内に侵入。免疫力が低下していると発症してしまいます。
唾液には病原性のある細菌やウィルスを死滅させる成分が含まれています。
しかし唾液が少ないと力を発揮できません。
口臭が強くなる
老人臭と呼ばれている独特のにおいの正体は実は口臭です。
唾液の分泌量の減少、口腔内の乾燥等で細菌が増えると、口臭が強くなります。
又虫歯が進行したり、歯周病で歯肉(歯ぐき)の炎症が進むと、強い悪臭になります。
虫歯や歯周病で歯を失う
虫歯や歯周病は細菌が原因で起こる感染症です。
口の中が汚れていたり、体の抵抗力が低下すると急速に進行し、最悪の場合、歯を失うことになります。
また歯周病菌を誤嚥すると肺炎を起こす危険性が高くなります。
歯周病菌や菌の出す毒素が血液中に入ると、動脈硬化や心筋梗塞、骨粗鬆症等を発症することもわかっています。